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分離不安症③

今回は、すでに分離不安症の症状がでている犬への対処法についてお話します。
幸い、分離不安症に関しては効果的な対処法が確立されており、補助的に使用することができる有効な薬も承認されています。獣医師の指導の下、お薬で不安を和らげるのも効果的な方法です。

★飼い主が外出する準備をしだすと、不安なそぶりを見せる★
例えばかばんを持つ・お化粧をする・鍵を持つ・ケージに入れられるなどの行動を、犬が「飼い主が外出する合図」だと覚えている場合、それらの行動をとると不安を予測して落ち着きがなくなりだします。
「外出前にする行動」を犬に覚えさせないために、これらの行動を外出しないときにも行い、慣れさせておきます。

★「外出前の行動」に慣れてきたら・・★
「外出前の行動」に慣れ、不安なそぶりを見せなくなってきたら、次は短い外出に慣らしていきます。
最初は「ドアノブにさわる」「玄関に近づく」「靴をはく」などを行い、もしこの段階で犬が不安なそぶりを見せるなら、犬がこの行動に慣れるまで何度もくり返します。
次に「ドアを開ける」「ドアを開けて外に出る」「外に出て、ドアを閉めてすぐに戻る」
などの段階を経て、しだいに1分間~3分間~5分間といったように、少しずつ外出時間を伸ばしていくようにします。

★外出中の工夫★
犬が留守番になれるまで、外出時もテレビや電気をつけっぱなしにしておき、人間が家にいるときと同じ状況で出かけるようにするのも良いでしょう。
外出時はケージにいれておくのならば、外出する30分以上前から入れておき、その間はガムなど与え、犬が特別なおやつに夢中になっている間にさりげなく外出します。

★帰宅時の対処法★
外出時と同様に、帰宅時にオーバーな再会の挨拶をするのは逆効果です。帰宅時に犬が興奮して出迎えに来ても無視し、犬が落ち着いてからはじめて声をかけたり、触ったりするようにしましょう。
お留守番中にしてしまったことに対して怒ることもよくありません。分離不安症は、犬が不安やストレスを感じているためにおこっています。罰を与えることで、犬は余計にストレスを感じてしまいます。

3回にわたって、分離不安症についてお話しました。
分離不安症の相談をうけていると、しばしば犬の問題ではなく、飼い主さんが犬に対して分離不安なのが問題ではないか、と感じることがあります。
「猫かわいがり」という言葉がありますが、猫はどんなに甘やかしても、飼い主に依存しすぎて分離不安になることはありません。しかし、犬に対して「猫かわいがり」し、精神的に自立させないことは分離不安症の原因になります。
飼い主は犬にとって「リーダー」であるべきであり「母犬」になってはいけません。
生涯、片時もはなれず犬とすごすことは不可能です。犬が不安やストレスから開放され、快適に日常生活をおくれるようにしてあげるのは、飼い主さんの犬に対する思いやりではないでしょうか。

分離不安症②

今回は、犬を精神的に自立させ、留守番にならすためのポイントについてお話したいと思います。

①精神的に自立させるために
★日常生活の中で、犬のほうから甘えて近づいてきても、相手にしないようにします。犬との接触は、常に飼い主主導で行うようにし、犬をなでたり抱いたりしたいときには、犬から求めてきたときではなく、飼い主が犬を呼び寄せ、「おすわり」「ふせ」といった号令に従わせたごほうびとして行います。
★飼い主が家にいるときも、飼い主と別の部屋で過ごす時間を作ります。

②留守番にならすために
★外出前に、犬に「お利口にしててね」「お留守番させてごめんね」などといいながら、抱きしめたり、なでたりする‘オーバーなお別れの儀式’は、犬に飼い主との別れを予感させ、不安にさせます。外出前30分は犬を無視し、あっさりと家をでていきましょう。
★出かける際には、犬に「時間をつぶせる特別なおもちゃ」を与えましょう。バスターキューブなどの中にフードを入れられるおもちゃや、硬めのガムなどが良いでしょう。飼い主がいなくなるのは、特別うれしいごほうびがもらえる合図だと思わせます。

日常生活の中で、散歩や遊びの時間を増やし、十分に運動させることも分離不安の予防に効果があります。外出前に運動しておけば、留守番中は寝てくれるはずです。
また、「おすわり」「まて」などの基本服従訓練はできるようにしておきましょう。

高齢の雌に多い疾患~子宮蓄膿症

子宮蓄膿症は、子宮内膜の変化と細菌感染によって子宮腔内に膿汁がたまる疾患です。性成熟した雌であれば、罹患する可能性はどの年齢にもありますが、5歳以上の特に高齢に多く見られます。また、出産経験のない高齢犬や、出産してから何年も経つ高齢犬に発生しやすくなります。

原因
1.子宮内膜の変化
子宮蓄膿症は、発情に伴って分泌されるホルモン、特にプロゲステロン(黄体ホルモン)の関与が大きいとされています。
プロゲステロンは、通常、子宮内膜腺の成長と分泌活動を刺激し、受精卵の着床・妊娠維持に向けて子宮内の環境を整えます。通常発情後2ヶ月の間で徐々に消失しますが、妊娠していない場合はさらに消失速度は緩やかで、長期間分泌されることもあり、子宮内膜に作用し続けます。
プロゲステロンは、子宮内膜の増殖を起こすため、発情が繰り返されることで肥厚が進み、嚢胞性子宮内膜過形成が起こります。この状態の子宮は、細菌感染への防御能が弱く、子宮内での細菌増殖・膿汁貯留へと発展します。

2.細菌の子宮への侵入
外界と子宮をむすぶ膣には、健康でも常に細菌は存在しますが、通常、子宮内に細菌を侵入させない機能があります。しかし、発情期になると、子宮の入り口がゆるみ、子宮内への細菌侵入が起こりやすい状態となります。
したがって、発情後に子宮蓄膿症の罹患率が高くなります。

症状
発情が終わってから、2~3ヶ月以内に現れることが多いです。
徐々に進行すると、発情周期に見られる陰部からの出血以外の分泌物や、嘔吐、元気・食欲の低下、水を異常によく飲む、尿の量が多いなどの症状が見られます。
子宮蓄膿症は、進行すると全身状態が極めて悪く、敗血症や腹膜炎などを併発することもあり、大変危険な状態になります。

予防
子宮蓄膿症の場合、外科的に子宮と卵巣を摘出する事が根本的な治療になります。
しかし、子宮蓄膿症による全身状態の著しい悪化、高齢であることによる体力の低下から、外科手術・麻酔に対するリスクも高く、術後も、子宮内の細菌が産生した毒素によるエンドトキシンショックなどの危険性もあります。
したがって、繁殖の予定がないのであれば、体力のある、健康な若い時期での避妊手術が根本的予防となります。

分離不安症①

「分離不安」という言葉をご存じですか?
飼い主さんが大好きで、仔犬が母犬に示すような愛情を飼い主に抱いており、普段からいつも飼い主にくっついてはなれないといった犬にみられる行動のことを言います。
こういう過剰な愛情をもった犬は、飼い主と少しでも離れてしまうと不安でたまらなくなり、「物を壊す」「不適切な場所での排泄」「吠える」「自傷行為」といったさまざまな問題行動をひきおこします。

飼い主が家にいるときでも、ちょっと別の部屋にいくとついてきたり、トイレやお風呂の中にまで一緒にはいりたがったりすることもあります。
また、飼い主が出かける用意をしだすとそわそわと落ちつきがなくなり、不安な様子を見せます「分離不安症」の特徴として、飼い主のいないときだけ問題行動がおきるので、飼い主は「留守番させたことへの嫌がらせ」「しつけが悪い」と勘違いしてしまいがちです。
しかし、分離不安症の犬がおこす問題行動はけして「嫌がらせ」でも「しつけが悪い」わけでもなく、不安やストレスがひきおこしているものなのです。
犬は強い不安とストレスで、自分で自分をコントロールできなくなってしまうのです。

犬が甘えてくるのはかわいいものですが、人間側の「甘やかし」が度をこすと、このような問題がおこってきます。
母犬が成長した仔犬をつきはなすように、飼い主が犬と距離をおいて接することで、犬が精神的に自立するように導く必要があります。
犬が不安やストレスから開放され、快適にお留守番できるようにしてあげるのは、大切なしつけと言えるでしょう。

飛びついてくる

人間が大好きで、元気いっぱいの仔犬は、人間をみるとうれしさのあまり飛びついてくることがあります。しっぽを激しくふりながらじゃれついてくる子犬はとてもかわいく、ついなでたり声をかけたりしてしまいます。しかし、小型犬ならば「かわいい」ですみますが、大型犬で力が強かったり、お年寄りや子供にとびついてしまうと、転倒などの事故につながることも考えられます。
仔犬のうちに、どんなときでも人間には飛びつかないこと・正しい方法で人間と挨拶することを教えてあげましょう。

「おすわり」の号令を教える
食事のときだけでなく、なでるとき、散歩に行くとき、信号待ちのときなどありとあらゆる場面で「おすわり」をさせ(もちろん、できたらほめます)、子犬が自発的に「おすわり」をする習慣を身につけさせます。

飼い主とじょうずに挨拶する訓練をする
①まず、仔犬にリードをつけ、どこかにつないでおきます。
つぎに、遠くから仔犬に近づきます。近づいたときに仔犬が飛びつこうとしたら、仔犬に背をむけて遠ざかります。
そして、少し間をおいてまた近づきます。再び飛びつこうとしたら背を向け、遠ざかります。これを何度も繰り返してください
★仔犬は、これまでの経験から、「飛びつくと、飼い主はなでたり、声をかけてくれるので、楽しい」と勘違いしています。「飛びつこうとすると無視される」ことを学習させます

②近づいたときに、仔犬が飛びつかずにいられたら、1回だけ「おすわり」と落ちついた声で号令をだします。仔犬が「おすわり」をしないなら、近づいてはいけません。ふたたび仔犬から離れてください。
★何度も、大きな声で号令をだすと、仔犬が興奮してしまいます。1回で従わないのならすこし時間をおいて、仔犬を落ち着かせましょう。

③近づいたときに、仔犬が「おすわり」の号令に従ったり、自発的に「おすわり」をしているならやさしくほめて、ごほうびを与えます。
★人間が近づくと立ち上がってしまうなら②からやりなおし、「おすわり」をしていないとなでてもらえないことを学習させます。

他人とじょうずに挨拶する訓練をする
道端で誰かに会ったときや、お客さんが家にやってきたときなど、子犬が飛びついてしまう状況で訓練します。
最初はリードを短めに持ったり、足で踏んでおくなどして飛びつけない状況を作ります。
そして、「おすわり」して人間が近づくのを待っていられたら、ごほうびを与えます。
お散歩中も、誰かに会ったときは「おすわり」をさせてから、なでてもらうようにします。
室内で、リードがついていない場合でも同じように訓練します。
この訓練の間に、人間に飛びつくとなでてもらえるという経験をすると、再び飛びついて挨拶するようになるので注意しましょう。

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