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楽しいボディケア・犬編①〜お家で健康管理

社会化期のうちに行いたいことの一つに、将来飼い主さんが犬のケアを行えるように体中どこでも触れるようにしておく、ということがあります。
お腹をみせたり、口元を触らせるようにトレーニングすることは、飼い主さんとの信頼関係を築く上で役立ちますし、日ごろから犬の体をチェックしておくことで異常の早期発見ができます。
今回から、仔犬が楽しくケアを受け入れられるようになる方法をお話していきます。

まず、仔犬の体中を触るトレーニングからはじめます。
仔犬が興奮してしまう時間や場所をさけ、遊びつかれて眠くなっている状態の時に、落ち着けるような状況をつくっておこないます。
ゆっくりと静かな口調で仔犬に声をかけ、頭部から尻尾にかけてゆっくりとなでるようにします。落ち着くことができずに、興奮しっぱなしの場合には、まず十分にエネルギーを発散させてからおこないましょう。

最初はうまくできなくても、眠いときに飼い主さんになでられることが心地よいと感じれば、しだいに落ち着けるようになってきます。
大きい声で「静かに!落ちついて!」などと声をかけたり、ゆすったり激しくなでたりすることは逆効果になりますので、避けましょう。

仔犬が落ち着いてうとうとしてきたら、体中をゆっくりとチェックしていきます。
やさしく声をかけながら耳のなかをのぞいてみましょう。赤くなっていたり、耳あかがでていないか確認します。まぶたをすこし持ち上げ、赤くなっていないか、目やにが出ていないかチェックします。
同様に鼻、口の周り、口の中(歯の状態など)、爪の伸び具合、足の裏の状態、ヒフの状態(ノミやダニがいないかなど)、肛門や外陰部の状態に異常がないか確認します。
途中で嫌がる場所があったら無理やりさわらず、最初はごほうびを食べさせながら触るようにし、徐々に嫌がらずに触らせたらごほうびを与えるようにして慣らしてきます。
正常な状態を良く知っておくことで、小さな異常に気づくことができますので、このトレーニングができるようになると、病気の早期発見につながります。
また、触られることに慣れていれば、病気の治療や検査、トリミングの際のストレスも少なくてすむでしょう。

社会化トレーニング③ 犬にならす

前回までで、仔犬の社会化の重要性についてご理解いただけたとおもいますので、今回は犬同士の社会化について、具体的にお話したいと思います。

好奇心旺盛な仔犬であれば、ほかの犬に会うとリードひっぱって突進してゆきます。
多くの飼い主さんは仔犬が進むままにしてしまいますが、これはマナー違反な行為です。
たとえ仔犬に悪気がなくても、いきなりとびつかれると多くの犬が驚きますし、性格によっては怒るかもしれません。仔犬に、道端でであった犬すべてと挨拶できるわけではないことを教えます。

まず、飼い主は仔犬のリードをしっかり持ち、相手の犬の飼い主と挨拶をかわしながら通り過ぎます。無事に通り過ぎれたら、仔犬にやさしく声をかけるか、少しのご褒美を与えましょう。
もし仔犬が他の犬を見ることで興奮し飛びついていこうとするならば、一旦仔犬の興味を飼い主に戻し、クールダウンさせる必要があります。「音の出るおもちゃ」や「缶にフードを入れたもの」などを鳴らし、仔犬の興味をひきます。
このときに飼い主が大きな声で名前を呼んだり、「だめ!」などと叱ることは逆に仔犬を興奮させますのであくまでも冷静に対処しましょう。
仔犬が音の出る方向を見たら、その場で「お座り」「伏せ」などの号令にしたがわせます。仔犬が「お座り」をした状態で他の犬とすれ違えたらほめてあげましょう。
このような仔犬とほかの犬をあそばせるときにも、仔犬に号令をかけて落ち着かせておき、相手の犬が近寄ってきてから遊ばせるようにするとよいでしょう。

逆に怖がるタイプの子犬であれば、他犬と十分に距離をとってすれ違い、大丈夫だったという経験を積ませます。他の犬が遠くにみえる距離をたもちながらご褒美を与えるとよいでしょう。散歩中によく会う、性格の優しい犬と少しずつ距離を縮めながらならしてゆきます。

感受性がゆたかな仔犬の時期の経験は、その後の性格形成に大きな影響を与えます。
様々な経験をさせ、それによって仔犬が「楽しい」「怖くない」と感じることが社会化トレーニングの目的です。もちろん、1度怖い経験をしたとしても、その後何回も楽しい経験を積むことで克服できますので、あきらめず根気よく取り組んでください。
仔犬が怖がっていても、仔犬に明るく声をかけ楽しい雰囲気をつくることが大切です。
他の犬にあうことは怖いことではないという態度を仔犬に見せましょう。

短い社会化期に、すべての社会化トレーニングが完了できるわけではありません。
犬は成長に伴って様々な経験を積み、学んでいきます。社会化トレーニングは、犬を飼う上で生涯心がけなければいけないものであることを覚えておいてください。

社会化トレーニング② 犬にならす

犬との生活の中で、お散歩は飼い主さんにとっても犬にとっても大きな楽しみの一つです。
運動になるだけでなく、散歩中に出会う犬や人とうまくコミュニケーションがとれれば、精神的にも良い刺激になります。
また飼い主さんにとっても自分の犬が他の犬と上手に挨拶できれば、様々な場所に犬と一緒にでかけることができるでしょう。
人間が人間同士のコミュニケーションを楽しむように、犬も本来ならば犬同士のふれあいを楽しむ動物です。
他の犬に会うと攻撃的になったり、おびえてしまう犬は、犬との社会化不足が原因である場合が少なくありません。

犬同士の適切な社会化のためには、

  • 少なくとも生後7~8週までは、母犬や兄弟犬と一緒に過ごさせる
  • 母犬や兄弟犬と離れた後も、できるだけ犬と一緒に遊ばせる
  • 社会化期をすぎたあとも、様々な犬と楽しい経験をもたせる

ことが大切です。

家にやってきた子犬には、母犬や兄弟犬に会いに行く・知人の愛犬と遊ばせる・パピークラスに参加する・などして、積極的にほかの犬とのふれあいの時間を持たせましょう。特に同じ年頃の仔犬同士なら、おもいっきり遊ばせることで人間へのじゃれがみも減らすことが出来ます。
仔犬同士の遊びは一見けんかをしているようにみえることがありますが、多くの場合仔犬たちは激しい遊びを楽しんでいて、大きなケガをするようなことはありません。
しかしながら、あまりにサイズが違う犬同士であったり、どちらかがヤンチャすぎる性格だと問題が起きることもありますので、注意深く見守ってあげましょう。
嫌がっているようにみえる仔犬が、自分から相手の仔犬に近づいて遊びを誘うのなら、問題なく遊ぶことができるでしょう。

仔犬を成犬に会わせる時一番注意しなければならないのが、相手の犬の性格です。
相手の犬が他の犬とうまく触れ合えないのであれば、仔犬が近づいてきたら攻撃的になるかもしれません。もし子犬がよろこんで他の犬に飛びつこうとしても、むやみに近づかせてはいけません。
まず成犬の飼い主さんに、仔犬を近づかせても良いか確認をとりましょう。
性格の優しい犬であっても、あまりに仔犬がしつこくすると、唸ることがあります。
成犬が本気で仔犬を攻撃するのでなければ、成犬に対するマナーを学ぶ良い機会になりますので様子を見守ると良いでしょう。
じきに仔犬は、犬に対してしてもよいことと悪いことを学んでいくはずです。

社会化トレーニング①

「社会化トレーニング」とは、社会化期を利用して様々な刺激になれさせ、将来おこりうる問題行動を予防するために行われます。

犬の問題行動の中で、もっとも深刻な物は「人間への攻撃性」です。
「人間への攻撃性」は仔犬のうちからみられることはまれで、ほとんどが成長してからみられるようになります。仔犬の時点で問題がなくても、トレーニングをおこなって予防しておくことが大切です。

★お散歩に行くときにフードかおやつをもって行き、声をかけてきた人に与えてもらいます。最初は食べなくても、やさしく声をかけ、毎日続けます。
道で知らない人に会うことは楽しいことだと学習させ、怖がったり吠えたりしないようにトレーニングしていきます。家庭内にいないタイプの人(お年寄りや、メガネをかけた人など)や、傘をさしたひと、帽子をかぶった人などなるべく様々な人と触れ合えると良いでしょう。
特に子供に対しては、犬が歯をあてだけでも大きなケガになりやすいので注意が必要です。
子供と犬を接触させるときには、まず子供に『走って近づく・大声をだす・上からおおいかぶさる・急に触るなどの行為は、犬にとって怖い物である』ことを教えます。
子供が安全に犬に触るためには、まず飼い主に「犬に触ってもいいですか」と聞き、許可を得てから手を犬の顔の下に差し出します。そのときに犬が顔をそむけたり、後ずさりするようなら、触ってはいけません。そのような行為が見られないなら、子供から犬にフードを与えてもらいましょう。もし触られるのを嫌がるなら、フードを犬の足元へ投げてもらい、少しずつ慣らしていきます。
もし仔犬がよろこんで知らない人にとびついていくようなら、「おすわり」をさせてから与えるようにしましょう。飛びつくことを習慣にさせないことも大切です。

★家にやってきた人にも、仔犬に食べ物を与えてもらいます。犬はテリトリーを守る習性がありますので、成犬になってから来客に吠えたり威嚇したりする可能性があります。
郵便屋さんや、集金などの頻繁に訪れる人間には、仔犬のときに十分に慣らしておくと
良いでしょう。「チャイムの音に慣らす」に関しては、第15回に書いていますので、参考にしてください。

★動物病院やトリミングなど将来行く機会がある場所には、フードを持参していき、スタッフから与えてもらいましょう。

最初は仔犬の様子に十分注意し、無理のないふれあいからはじめてください。
知らない人が近づくと怖がるしぐさが見られるなら、いきなり触ったり抱いたりすると逆に仔犬に恐怖心を与えていまい、人間嫌いの原因になります。好物をあたえてもらう、おもちゃで遊ぶなどの子犬にとって楽しいふれあいからスタートし、慣れてきたら触るようにします。

怖がりな仔犬は人に慣らすのに時間がかかりますが、成犬になればなるほど慣れにくくなりますので、できるだけ小さなうちから慣らすことが大切です。

社会化トレーニングとワクチン接種について

社会化トレーニングをおすすめするのと裏腹に、「仔犬をワクチンプログラムがすべて終わるまで外に出さないように」とアドバイスすることがあります。ワクチン未接種の状態だと、伝染病に感染する恐れがあるからです。

前回お話したように、社会化期は仔犬・子猫の初回ワクチン時期と重なります。
通常、幼年時のワクチンは1ヶ月間隔で2~3回の接種が必要ですので、アドバイス通りにすると、仔犬が初めて家の外にでるのは3~4ヶ月齢になってから、ということになります。
そうすると社会化期を過ぎてから初めて強い刺激のある場所に連れて行くことになりますので、外や他の動物に対して恐怖心を持ってしまう危険性があります。
ワクチンプログラムがおわるまで仔犬を外に出さないことは、「子犬を伝染病から守る」という点では良い方法であっても、「仔犬の精神的成長」という点からは好ましくありません。

当院では、新しい環境に慣れ、健康で栄養状態もいい仔犬であれば、いくつかの注意点を守ることで安全に仔犬を社会化できると考えています。
少なくとも1回の有効なワクチン接種をおこない、元気で食欲もあるようなら、できるだけ早い時期から抱っこをしてのお散歩をお勧めします。
抱っこでのお散歩に慣れてきたら、ドックランなどの不特定多数の犬が集まる場所はさけ、犬の排泄物に接触しないように注意しながら地面を歩く訓練をしてみましょう。
そして、ワクチンプログラムが終わる頃には安心してさまざまな場所に連れて行ける状態まで慣らしておきます。

上記の注意点を守れば、仔犬がお散歩によって伝染病に感染する可能性は低いと考えています。もちろん、可能性はゼロではありません。しかし、低い確率のリスクよりも、「心の成長」という大きなメリットがあると思います。

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